特許庁委託 平成17年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業
特許出願時の遺伝資源出所開示及び
遺伝資源アクセス時の事前承認機関に関する
調査研究報告書
平成18年3月
社団法人
日本国際知的財産保護協会
はじめに
特許庁委託の平成 17 年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業は、主要国の産業財 産権の現状と動向を把握し、わが国の望ましい制度の構築に役立てることを目的としてい る。この「特許出願時の遺伝資源出所開示及び遺伝資源アクセス時の事前承認機関に関す る調査研究」は同事業の一環である。
1993年12月29日に発効した生物多様性条約(CBD)は、各国が遺伝資源に対する主 権的権利を有することを確認し、遺伝資源の研究および開発の成果並びに商業的利用その 他の利用から生ずる利益を遺伝資源の提供国と公正かつ衡平に配分することが規定されて いる。
しかしながら、CBD には利益配分についての具体的な枠組みについて何ら規定されて いないこともあり、現状では利益配分が進んでいないと認識している豊富な生物多様性を 有する国は、利益配分が確実に行われるための国際的な制度の創設を強く求めている。
かかる状況の下、豊富な生物多様性を有する国は利益配分を推進するための一つの枠組 みとして、遺伝資源を用いた発明の特許出願に原産国(出所)を開示することや、事前の情 報に基づく同意(PIC)取得の証拠、及びABSの契約を開示することを義務づけるよう主 張しており、遺伝資源に関する国際的な議論における重要な論点の一つとなっている。
そこで、既に特許法の中で特許出願時に遺伝資源の原産国(出所)開示を求めている国(若 しくは制度構築中の国)の制度内容等を調査・整理し、加えて各国際会議での議論の経緯・ 進捗をまとめ、各種交渉に臨む際の基礎資料を作成することを目的とした。
調査の対象国としてインド、ブラジル、ペルー、コスタリカ、ノルウェー、デンマーク、 スイスを選定し、アンケート、現地訪問等により各国の制度と制度構築の状況を調査する とともに、WIPO、WTO等、国際機関での議論の経緯を整理・分析した。
本報告書が、わが国だけでなく国際的な産業財産権制度の整備に向けた施策に多くの示 唆を与えるものとなることを願っている。
最後に、ご協力いただいた各国知的財産庁、法律事務所、知的財産専門家の方々に心か らお礼を申し上げたい。
平成18年3月
社団法人 日本国際知的財産保護協会 (AIPPI・JAPAN)
【執筆・調査】
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目次
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はじめに
目次
1.特許出願時に遺伝資源の出所開示を求める制度の状況
1-1 概要···
1-2 インド
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容··· (2)開示義務違反に対する措置・罰則··· (3)遺伝資源へのアクセス承認機関の状況··· (4)法律事務所の実情と意見··· (5)企業の実情と意見···
1-3 ブラジル
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容··· (2)開示義務違反に対する措置・罰則··· (3)遺伝資源へのアクセス手続きと承認機関の状況··· (4)ブラジルINPIの実情と意見··· (5)法律事務所の実情と意見··· (6)企業の実情と意見··· (7)NGOの実情と意見···
1-4 ペルー
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容··· (2)「伝統的知識」に関する開示義務違反に対する措置・罰則··· (3)遺伝資源へのアクセス手続きと承認機関の状況··· (4)INDECOPIの実情と意見··· (5)法律事務所の実情と意見···
1-5 コスタリカ
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容··· (2)遺伝資源へのアクセス手続きと承認機関の状況··· (3)産業財産登記所の実情と意見··· (4)法律事務所の実情と意見··· (5)企業の実情と意見··· (6)NGOの実情と意見···
1-6 ノルウェー
(3)遺伝資源へのアクセス承認機関の状況··· (4)ノルウェー特許庁の実情と意見··· (5)ノルウェーの遺伝資源出所開示に関する研究者の意見···
1-7 デンマーク
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容··· (2)開示義務違反に対する措置・罰則··· (3)遺伝資源へのアクセス承認機関の状況··· (4)デンマーク特許庁の実情と意見··· (5)法律事務所の実情と意見··· (6)企業の実情と意見···
1-8 スイス
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容··· (2)開示義務違反に対する措置・罰則··· (3)遺伝資源へのアクセス承認機関の状況··· (4)スイス連邦知的財産庁の実情と意見··· (5)法律事務所の実情と意見··· (6)企業の実情と意見···
2.国際会議における遺伝資源出所開示の議論
2-1 議論の概要···
2-2 国際会議における議論の状況
3.各国から受領したアンケート回答
3-1 インド
(1) Anand and Anand法律事務所··· (2)インド企業···
3-2 ブラジル
(1)ブラジルINPI ··· (2)Trench, Rossi e Watanabe Advogados法律事務所··· (3)ブラジル企業··· (4)ブラジルNGO···
3-3 ペルー
(1)Estudio Colmenares S.R.L.法律事務所···
3-4 コスタリカ
(1)産業財産登記所··· (2)Castro & Pal Asociados法律事務所··· (3)コスタリカ企業··· (4)コスタリカNGO···
3-5 ノルウェー
(1)ノルウェーの研究者···
3-6 デンマーク
(1)デンマーク特許庁··· (2)Plougmann & Vingtoft a/s法律事務所··· (3)デンマーク企業···
3-7 スイス
1.特許出願時に遺伝資源の出所開示を求める制度の状況
1-1 概要
本調査対象国である 7 カ国、インド、ブラジル、ペルー、コスタリカ、ノルウェー、ペ ルー、スイスのうち、特許出願時に遺伝資源の出所開示を法的に義務づけているのは、イ ンド、ペルー
1
、ノルウェー、デンマークである。ブラジル、スイスは現在、法・規則を整 備中である。また、コスタリカについては、今のところ法・規則を改正しようという動きは ない。
遺伝資源の出所開示義務づけの対象としている特許出願に関して、インド特許法におい ては「その発明そのものや、その作用・用途、及びその実施の方法を十分かつ詳細に記述 することができないような生物学的材料が明細書に記載されている場合であって、当該材 料が公衆にとって入手できない場合」に限定している。つまり、遺伝資源をもとにした発 明すべてに、その出所開示を義務づけているわけではなく、「明細書に基づけば発明の実施 が可能である場合」や、「遺伝資源が容易に入手できる場合」などは、この対象から除外さ れる。
これは、日本における寄託制度にかかる取り決めと類似している。「特許・実用新案審査 基準 第 VII 部 特定技術分野の審査基準」によれば、「・・・動(植)物の利用に関する発明 において、発明の詳細な説明に当業者がその動(植)物を製造することができるようにその 創製手段を記載することができない場合には、・・・動(植)物を寄託する必要がある。」と し、さらに「明細書に作出過程を順を追って記載しても、親植物が容易に入手できないた めに当業者が実施をすることができない場合には、・・・親動(植)物(その種子、細胞等) を出願前に寄託し、その寄託番号を出願当初の明細書に記載する。」とされている。寄託申 請書には「原産地」等を記載する欄があり、義務的ではないが出所開示に相当する情報を 求めている。
これに対して、ノルウェーとデンマークにおける遺伝資源の出所開示義務は、「遺伝資源 の入手の容易性」や、「十分かつ詳細な記述がされているか否か」とは関係なく、「発明が 生物材料に関係しているか、または使用している場合」が対象となっており、国際会議等 の場における生物多様性の豊富な国々や、スイスの主張とも符合している。立法化の準備 中であるブラジル、ペルー、スイスにおける法・規則案も、対象とする出願はこれと同等の 規定案となっている。
具体的な遺伝資源の対象範囲は、ノルウェーとペルーは条項中に「派生物を含む」と記
1 ペルーでは、アンデス協定決定486号によりアクセス契約書のコピー添付が義務づけられている。国内規則
述しているが、デンマーク、スイス(法案)にはその記述がないという違いあるものの、4 か国とも概ね「派生物を含む」と解釈している。しかし、いずれの国も派生物であっても 「化学的に変換された遺伝資源」については明確な規則も解釈も存在しないのが実態であ る。なお、「一般に市販されている遺伝資源」をもとにした特許出願については、ノルウェ ー、デンマーク、スイスが「対象」としているのに対して、ペルーの規則案の解釈では「対 象外」としているのは注目に値する。
特許出願にあたって遺伝資源の出所開示がない場合の扱いは、ノルウェー、デンマーク が「特許出願に影響しない」に対して、インドとスイス(法案)は出願が「拒絶される」と 対応が厳しくなっている反面、「遺伝資源の取得がCBD発効以前であっても対象」として いるノルウェー、デンマークとは異なり、スイスは「CBD発効以前の場合は対象外」、「出
所(source)の意味を広く解釈」するなど、出願人への配意も見られる。
なお、出願人が出所を知らない場合には、法・規則案準備中のブラジルとペルーは不明 であるが、その他の国はいずれも「その旨記載すればよい」としている。
全体的には、本制度導入済みの国については、その制度の枠組みは整えたものの不明確 な部分もあるため、具体的には運用を通じて詳細化するという段階にある。しかし、欧州 においては多くがEPO へ出願されることもあり、現状では対象となる内国出願がほとん どないという状況である。また、今後制度を構築していく国においては、今回本調査を通 じて我々が提起した上記のような不明瞭点を取り上げるなどをして、検討の俎上に乗せる か、または他の先行国と同様に不明瞭のまま立法化するかは予断を許さない。出願件数も 少なくほとんど影響のない国としては、発展途上国への配慮のため制度のみ構築し、あと は国際的な動向に合わせるか、あるいはスイスのように積極的に国際的な枠組みの提案を していくという政策のいずれかであろう。
遺伝資源へのアクセス承認機関については、インド、ブラジル、ペルー、コスタリカに おいては、各国の「生物多様性法」、「遺伝資源アクセス法」等により、規定するとともに アクセス手順も詳細かつ具体的に取り決められており、遺伝資源の保護に対する姿勢がう かがわれる。
インドでは生物多様性法で、遺伝資源をもとにした発明を特許出願する前に、インド国 内機関である国立生物多様性局(NBA)に許可申請することを求めている。また、ブラジル では、外国法人が遺伝資源へアクセスすることを許されるのは、アクセスについて主導権 をもったブラジル国内の公的機関を協力する場合に限定されているなど、各国特有の制度 を設けている。
「出所を知らない場合はその旨表記することを認める」、「特許の有効性に影響を与えない」、 「CBD 発効以前の遺伝資源は対象としない」等の条件つきであれば賛成である。なお、 この制度のないコスタリカの企業は、制度が十分に理解されていないとも思われる「新たな 研究開発の機会が増すので賛成」との意見であった。
1
1-2 インド
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容
イ ン ド で は 特 許 法 で 、 遺 伝 資 源 の 出 所 開 示を 義 務 づ け てい る(特 許 法 第 10 条
(4)(d)(ii)(D))。つまり、発明そのものや,その作用・用途、及びその実施の方法を十分
かつ詳細に記述することができないような生物学的材料が明細書に記載されている場合 であって、当該材料が公衆にとって入手できない場合は、当該生物学的材料の出所及び 原産地を開示することを規定している。
出所開示のレベルについては、具体的に規定した規則やガイドラインがないのが現状 である。また、インドの法律事務所2の見解では、当該条項は生物学的材料を用いた発 明に関する特許出願すべてについて出所開示を義務づけており、CBD 発効前後で扱い が異なるものではない。
なお、インド特許法第 10 条(4)(d)(ii)はインドがブタペスト条約に加盟された際に追 加・修正された条項である。ブタペスト条約では文言上、微生物しか規定されていない が、実際には微生物より広い範囲での寄託が可能な運用がなされており、何が寄託でき るかは国際寄託機関毎に定められている。インドにおいても、この条項は微生物に限定 しておらず、生物学的材料全般について国際寄託機関に寄託する規定になっている。
<特許法(改正)法(2005年No.15)>(2005年4月4日) 第10条 明細書の内容
(4) 各完全明細書については,
(a) 発明そのもの,その作用又は用途及びその実施の方法を十分かつ詳細に記 載し,
(b) 出願人に知られ,かつ,その出願人がその保護を請求する資格がある発明 を実施する最善の方法を開示し,また
(中略)
(d) 発明に関する技術情報を提供する要約を添付しなければならない。 ただし,(中略)
(ii) 出願人が(a)及び(b)を満足する方法で記述できない生物学的材料を明細
書に記載しており,かつ,当該材料が公衆にとり入手不能の場合は, 当該出願については,ブダペスト条約の国際寄託機関へ当該材料を寄 託することにより,かつ,次の条件を満たすことにより,完備された ものとする。すなわち,(中略)
(D) 発明に使用されているときは,明細書において生物学的材料の
2 出所及び原産地を開示していること
さらに、特許法とは別に生物多様性法により、国立生物多様性局(以下、NBA) に対して、アクセス申請するだけでなく、特許出願する際には事前にその旨申請す ることを規定しているなど、特許管轄組織ではない NBA が特許の取得にあたって も積極的に関わっていることが特徴的である。
つまり、インドでは遺伝資源アクセス時に NBA へのアクセス許可の申請をし、 その後研究開発を行い特許出願する前に、再び NBA に対してその遺伝資源をもと にした発明を特許出願することについての許可申請をしたのち、ようやく特許庁へ の特許出願が可能となる。
NBA への特許出願許可申請は特許出願前に行わなければならないが、その許可 自体は当該特許の付与までに得ればよいことになっている。いずれにしても、これ はNBAが特許付与を認めるか否かの権限を有していることに相当する。
特 許 出 願 に お い て も 、 遺 伝 資 源 の 出 所 開 示 に 加 え て 、 特 許 規 則 様 式 1 の
「Declaration」欄には、「特許明細書で開示されている発明はインドで入手した生
物学的材料を使用しており、特許付与の前までに権限ある当局(NBA)からの許可 を得る」との記述があり、出願人に遺伝資源の使用と NBA からの許諾を得る旨、 宣言させる形態となっている。
<2002年生物多様性法(2003年N0.18)>(2003年2月5日)
第 6 条 知的財産権の出願は国立生物多様性局の承認なくして行われてはならない こと
(1)何人も、インド共和国で入手した生物資源に関する任意の研究または 情報に基づく発明について、インド共和国内及び国外において、どの ような名称のものであれ、知的財産権取得のために出願を行う場合、 その出願以前に国立生物多様性局の承認を得なければならず、承認が ない場合には出願を行ってはならない。
ただし、特許出願を行うとき、国立生物多様性局からの出願許可は、 管轄の特許局による特許出願受領後、かつ、出願登録前に(before
the seating)取得することが許される。
また、国立生物多様性局は承認申請を受理してから 90 日以内に、 その取り扱いを決定しなければならない。
第19条 特定の行為に必要な国立生物多様性局の承認
3 (2)開示義務違反に対する措置・罰則
①特許出願時に、遺伝資源の出所開示がない場合、(出願人に補正の機会を与えてもな お、情報の開示がない場合)最終的に当該特許は拒絶査定される。(特許法第15条)
<特許法>
第15条 出願の拒絶を行うか又は補正を求めることに関する長官の権限
出願又は出願のために提出された明細書又はその他の文書が本法若しくは 本法の下で定められた規則の規定を遵守するものでないと判断した場合、長 官は、当該出願の拒絶を行うか、又は当該出願に関する処分を下す前に出願、 明細書又はその他の文書を補正するように要求することができ、かつかかる 要求が満たされなかった出願を拒絶することができる。
なお、先の法律事務所の見解では、遺伝資源の出所が不明の場合は、特許明細書に 「不明」と記述すればよいとしている。理由は、「仮に遺伝資源の出所が不明な場合 でも、信頼の防御(the defense of good faith)がインド司法によって遮断されることは ないとの規則が 2002 年のインド特許法で導入されている」ということであるが、イ ンド特許法で「good faith」の記述が見られるのは、第111条と第114 条の特許侵害 訴訟にかかる条項だけであり、該当しないものと考えられる。
②遺伝資源の開示がなされていないか、または誤った開示がなされている場合、当該特 許出願の公開後で特許付与前であれば、いかなる者も異議申立てが可能である。さら に特許公報発行の日から1年間は、利害関係者による異議申立てが可能である。 (2005年特許改正法第25条(1)(j)、(2)(j))
さらに、特許法第 64 条では、期間の制限なく、利害関係者もしくは中央政府によ る申立てや、侵害訴訟における反訴に基づいて当該特許を、取り消すことができると している。
<特許法>
第25条 特許に対する異議申立
4 (中略)
(j)当該発明に使用された生物学的材料の出所又は原産地が本明細書に開示 されていないか又はそれに関して誤った記載がなされていること。
(中略)
(2)特許公報発行の日から1年間の期間が経過する前の時期においては、利害関 係者は、以下のいずれかの理由による特許付与への異議申立書を所定の方式 で長官に提出することができるものとするが、ただしその他の理由による異 議申立は認められない。
(中略)
(j)当該発明に使用された生物材料の出所又は原産地が本明細書に開示され ていないか又はそれに関して誤った記載がなされていること。
第64条 特許の取消
(1)本法に含まれる規定に従うことを条件として、特許については,付与された のが本法施行の前か後かを問わず、利害関係者若しくは中央政府による申 立てに基づき審判部が、又は侵害訴訟における反訴に基づき高等裁判所が、 次に掲げる理由の何れかによって、これを取り消すことができる。すなわ ち、
(中略)
(p)当該発明に使用された生物学的材料の出所又は原産地が本明細書に開示 されていないか又はそれに関して誤った記載がなされていること。
(3)遺伝資源へのアクセス承認機関の状況
生物多様性法に遺伝資源へのアクセス方法とアクセス承認機関が規定されている。 また、生物多様性規則にはさらに詳細な記述がある。
①機関の名称と位置づけ、組織構成
ア)名称:国立生物多様性局(National Biodiversity Authority :NBA)
本部はChennaiに所在する。
イ)組織構成:(生物多様性法第8条)
・NBAは議長1名、職務メンバ10名、及び非職務メンバ5名から構成される。 ・議長には、生物多様性の保全及び持続可能な利用について、また衡平な利益配
分に関して適切な知識と経験を有する人物がつき、中央政府により任命される。 ・職務メンバのうち 1 名は部族問題省の代表であり、2 名は環境・森林省の代表
5 (a)農業調査・教育
(b)バイオテクノロジー (c)海洋開発
(d)農業と協力
(e)インド共和国の医療及びホメオパシー制度 (f)科学技術
(g)科学及び産業研究
・非職務メンバは、生物多様性の保全、生物資源の持続可能な利用、及び、生物 資源の利用から得られる利益の衡平な配分に関して、特別な知識または経験を 有する専門家及び科学者、産業界の代表、及び、生物資源の保全者、創造者、 及び、知識の保有者の中から任命される。
ウ)NBAの主な機能(生物多様性法第6条、第18条、生物多様性規則第12条)
・インド共和国国民・法人以外が、インド共和国を出所とする遺伝資源または関 連知識を、研究、商業的利用、または生物調査及び生物使用のために、アクセ スする際に行う事前申請を承認する。
・インド共和国国民・法人であるか、インド共和国以外の国民・法人であるかを 問わず、インド共和国で入手した遺伝資源に関する研究または情報に基づく発 明について、インド共和国内において、知的財産権取得のために出願を行う場 合に行う事前申請を承認する。(NBA は、中央政府に代わって、当該知的財産 権の成立を阻止することができる。)
・上記の承認を行うにあたって、利益配分または特許権使用料、あるいは、その 双方を課すことができ、または、当該権利の商業的使用から生じる経済的利益 の分配など、他の条件を課すことができる。
・インド共和国以外の他国において、インド共和国で入手された生物資源に係わ る知的財産権が付与されようとするとき、それを阻止するための措置を講じる ことができる。(生物多様性法第 18 条(4)) しかし、他国での出願について、ど のように阻止を行うかについては具体的になっていない。
<2002年生物多様性法(2003年N0.18)>(2003年2月5日) 第18条 国立生物多様性局の任務と法的権限
(4)インド共和国以外のいかなる国においても、インド共和国で入手され た生物資源に係わる、または、インド共和国を出所とする当該生物資 源に関連した知識に係わる知的財産権が付与されようとするとき、国 立生物多様性局は、中央政府に代わって、そのような知的財産権を阻 止するためにいかなる措置も講じることができる。
6 A. 州立生物多様性評議会(State Biodiversity Board: SBB)
(生物多様性法第22条、第23条)
インド共和国国民・法人、及びインド中央政府が認めた国営機関との共同研 究プロジェクトが遺伝資源へのアクセスをする場合の申請を受理し、承諾する。
SBB は、州政府から任命された議長 1 名、州政府の関係省庁を代表する最大 5 名の職務メンバ、及びこの分野の専門家から任命される最大 5 名のメンバよ り構成される。
B. 生物多様性管理委員会
(Biodiversity Management Committees: BMC)
(生物多様性法第41条)
地方自治体の委員会であり、生息域の保存、在来種(land race)の保全、民 間の細かな品種(folk varieties)や栽培品種(cultivar)、動物及び微生物の飼 育種や品種、及び、生物多様性に係わる知識の伝承をはじめとして、生物多様 性の保全及び持続可能な利用と文書化を促進することを目的としている。
NBA、及び SBB は、アクセス申請の承認判断において、当該遺伝資源を保 全しているBMCと協議の上、決定を行う。
②アクセスの承認、特許出願の承認
生物資源へのアクセスの申請、承認及び特許出願の承認申請の手続きについては生 物多様性規則第14条、18条にその詳細が規定されている。
ア)研究または商業的利用目的のためのアクセス申請
(生物多様性規則第14条)
A. 申請者は生物多様性規則に添付されている様式Iを使用してNBAに申請する。 申請には、1,000ルピーの手数料が必要である。様式Iでは、申請者に関する情 報のほか、以下の情報の記述が求められている。
なお、インド中央政府が認めた国営機関との共同研究プロジェクトが遺伝資 源へのアクセスをする場合は、NBAでなく、州立生物多様性評議会(SBB)に 対して承認を得ることになる。
(a)遺伝資源の名称(学名) (b)アクセスする予定の地理的位置 (c)アクセスする予定の遺伝資源の量 (d)アクセスする予定の期間
7 (f)当該の遺伝資源にアクセスすることによって、生物多様性を脅かすことがあ
るかどうか、及びそのアクセスにより生じる可能性のあるリスク (g)研究開発活動に参加する予定国の機関の詳細
(h)アクセスされた遺伝資源の主な移送先及び研究開発が実行される場所の特定 (i)申請者または申請者の帰属する国が獲得することになるかもしれない、アク
セスされた遺伝資源及び知識を用いて取得される知的財産権、特許から生じ る経済的利益及びその他の利益
(j)申請者または申請者の帰属する国が獲得することになるかもしれない、アク セスされた遺伝資源及び知識から生じる生物工学的、科学的、社会的、及び その他の利益
(k)アクセスされた生物資源及び伝統的知識の利用から生じるインドのコミュニ ティが手に入れる利益の推計
(l)提案する利益配分の仕組みと取り決め (m)関連するその他の情報
B. NBA は、関連する地方自治体と協議し、申請者及びその他の情報源から必要 と考えられる追加情報を収集して、申請の受領の日から(可能な限り)6 ヶ月 以内に申請を処理する。アクセスの承認は、NBA 職員と申請者とが正式に署名 した合意書の形式で行う。合意書には以下の事項が含まれている。
(a) 一般的目標及び承認を求める申請の目的 (b) 遺伝資源及び伝統的知識の説明
(c) 遺伝資源の使用目的(研究、飼育、商業的利用など) (d) 申請者が知的財産権を求めることを可能とする条件
(e) 金銭的及びその他の付随する利益の金額。必要がある場合には、特に遺伝素 材が研究目的で採取される場合、並びにその使用について後からその他の変 更があった場合には特に新たな合意を結ぶ約束
(f) NBA の事前の承認なくアクセスされた遺伝資源及び伝統的知識を第三者に 譲渡することの制約
(g) 申請者がアクセスを求める生物資源の量及び品質規格に関して NBA の定め る制限の順守
(h) アクセスを求めた生物学的材料の参考標本を生物保管所に寄託することの保 証
(i) 研究その他の開発の定期報告のNBAへの提出
(j) 法、規則その他国内で実施されている関連法規の規定に従う義務
(k) アクセスされた遺伝資源の保全及び持続可能な使用のための措置を促進する 義務
8 (m) 合意の期間、合意の解除通知、個々の条項の独立した法的強制力、利益配分 条項の義務は合意の解除があっても存続するとの規定、法的責任(自然災 害)が制約される場合、仲裁、秘密保持条項などの法規定
イ)特許出願許可申請(生物多様性規則第18条)
A. インドから獲得された遺伝資源及び知識についての研究をもとにした特許出願 をする場合、事前に NBA に対して様式 III を用いて申請を行う。申請には、
5,000ルピーの手数料が必要である。
B. NBA は、申請を十分に査定し追加情報を収集した後に、(可能な限り)申請 の受領から 3 ヶ月以内に決定を下す。承認は NBA 職員と申請人とが正式に署 名した合意書の形式で与えられる。合意書の形式は、NBAが決定する。
C. NBA は、理由を示した上で当該の申請を拒絶することができる。申請者は、 拒絶命令の前に意見陳述の機会が与えられる。
③承認処理件数実績
NBA はアクセス申請を 19 件受領している。しかし現時点では全て承認まで 到っていない。
(4)法律事務所の実情と意見
(2005.8.29.アンケート)
Anand and Anand法律事務所
Mr. Pravin Anand
B-41, Nizamuddin East New Delhi-110 013 / India
①出所開示制度に対応することによる法律事務所の状況変化は?
→生物物質に関わる案件には、適切なスタッフを配置するよう部署を2つに分けてい る。
②出所開示制度によるバイオパイラシー等の問題解決の可能性は?
→インドの森林や湿地帯、海洋領域には非常に豊富で多様な生物が生息している。バ イオ・プロスペクターと権利保持者(原産国の権利者も含む)相互の関係を利益あ るものにするために、そしてバイオパイラシーを防止する観点で、開示要求は大い に貢献するものと考える。
(5)企業の実情と意見
(2005.8.29.アンケート)
9 ①「特許出願時の遺伝資源の出所開示制度」についての賛否
将来の正式な判定システム(identification system)を構築し、企業の遺伝物質侵入 を防ぐという意味では賛成である。
しかし、以下の観点では賛成できない。つまり、以前は遺伝資源・多様な種の交 換が自由になされていたので、原産地の特定が難しい遺伝資源も幅広く用いること で新たな開発が行われてきた。逆に、国をまたがって遺伝資源の交換がされてきた ため、原産地を正確に把握することを難しくしており、遺伝資源の原産地をピンポ イントで特定することは非常に困難だ。
②出所開示をすることの負担感
上記のように、発明毎に遺伝資源の出所を管理することが困難であり、従って過 去に入手した遺伝資源について出所が不明なものがある。特に、国際的な穀物研究 所から入手した品種改良された素材については、原産地を特定することが非常に困 難だ。
③出所開示制度導入による企業活動上変化の有無
遺伝資源の入手・交換手続きに関する正式な規則を策定しようとしている。
④出所開示制度はABSに貢献しているか否か
12 (インド生物多様性規則 様式I)
FORM I (See rule 14)
Application form for access to Biological resources and associated traditional knowledge
Part A
(i) Full particulars of the applicant (ii) Name
(iii) Permanent address
(iv) Address of the contact person/agent, if any, in India
(v) Profile of the organization (personal profile in case the applicant is an individual ). Please attach relevant documents of authentication): (vi) Nature of business
(vii) Turnover of the organization in US$
2. Details and specific information about nature of access sought and biological material and associated knowledge to be accessed
a) Identification (scientific name) of biological resources and its traditional:
b) Geographical location of proposed collection: c) Description / nature of traditional knowledge:
d) Any identified individual/community holding the traditional knowledge:
e) Quantity of biological resources to be collected (give the schedule): f) Time span in which the biological resources is proposed to be
collected:
g) Name and number of persons authorized by the company for making the selection:
h) The purpose for which the access is requested including the type and extent of research, commercial use being derived and expected to be derived from it:
i) Whether any collection of the resource endangers any component of biological diversity and the risks which may arise from the access:
13 activities.
4. Primary destination of accessed resource and identity of the location where the R&D will be carried out.
5. The economic and other benefits including those arriving out of any IPR, patent obtained out of accessed biological resources and knowledge that are intended, or may accrue to the applicant or to the country that he/she belongs.
6. The biotechnological, scientific, social or any other benefits obtained out of accessed biological resources and knowledge that are intended, or may accrue to the applicant or to the country that he/she belongs.
7. Estimation of benefits that would flow to India/communities arising out of the use of accessed bio-resources and traditional knowledge.
8. Proposed mechanism and arrangements for benefit sharing. 9. Any other information considered relevant.
PART B Declaration
I/We declare that:
• Collection of proposed biological resources shall not adversely affect the
sustainability of the resources;
• Collection of proposed biological resources shall not entail any environmental
impact;
• Collection of proposed biological resources shall not pose any risk to ecosystems;
• Collection of proposed biological resources shall not adversely affect the local
communities;
I/We further declare the Information provided in the application form is true and correct and I/we shall be responsible for any incorrect/wrong information.
14 Place
15 (インド生物多様性規則 様式III)
FROM III
(See rule 18)
Application for seeking prior approval of National Biodiversity Authority for applying for Intellectual Property Right
1. Full particulars of the applicant i) Name ii) Address
iii) Professional profile
iv) Organizational affiliation (Please attach relevant documents of authentication)
2. Details of the invention on which IPRs sought
3. Details of the Biological resources and/or associated knowledge used in the invention
4. Geographical location from where the biological resources used in the invention are collected 5. Details of any traditional knowledge used in the invention and any identified
individual/community holding the traditional knowledge
6. Details of institution where Research and Development activities carried out.
7. Details of economic, biotechnological, scientific or any other benefits that are intended, or may accrue to the applicant due commercialization of the invention.
Declaration
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Signed Name Title
16
1-3 ブラジル
(1)遺伝資源の出所開示制度の内容
ブラジルには、2001年8月23日制定の「遺伝資源及び伝統的知識へのアクセスに関 する暫定規則:Provisional Measure No.2.186-16」の第31条に遺伝資源の出所開示を 義務づける条項があり、毎月更新を行うことで有効性が維持されていたが、更新が中断 されてしまった現時点では有効でないため、特許出願時における遺伝資源出所開示の運 用はなされていない。(第 31 条以外では関連する他の法律・規則に同様の規定が含ま れている条項もある。)
<Provisional Measure No.2.186-16 (以下、PM)>
第 31 条 遺伝資源の構成要素を使用して獲得された方法又は製品に対して、所 轄機関が行う工業所有権の付与は、本暫定的規則を順守していることを 条件としており、出願人は、各状況に応じて、遺伝資源及び関連伝統的 知識の出所を特定する義務を有する。
PM に代わる法律として、遺伝資源とその生産物、伝統的知識の保護、及びその使用 による利益配分に関する先行法案(以下、Pre-Bill)の策定が進めてられており、現在、 環境省と関係省庁(科学技術省、農業省等)間との間で議論がなされているところであ る。各省庁から出された提案をまとめるためのワーキンググループが結成され、この
Pre-Billを分析した最終報告書を作成している。各省庁から提案されたPre-Billに対す
る意見は様々であるため、この作業は非常に難しいものとなっており、Pre-Bill が PM に代わるものとしていつ頃通過し、成立するのかの見通しは立っていない。
今後、関係省庁によって合意がなされた後、最終的な法案が上下両院での審議のため に国会に持ち込まれる。両院での議論、承認を経て、共和国大統領の許可を得て、最終 的に法律として成立する。全てのプロセスを経るには政府が新法設立は急務であると判 断し、迅速な議論への行動を起こさない限り、Pre-Bill が法案となり審議のために国会 に送られるまでには数年かかると言われている。
<Pre-bill>
第 80 条 この法律の発効後に出願された明細書の対象が遺伝資源とその産出物 あるいは伝統的知識から成されていた場合、「十分な記載の原則」に 応じるためには、遺伝資源とその産出物・関連する伝統的知識の原産 地情報が出願明細書に含まれていなければならない。1996年5月14 日の産業財産法(Industrial Property,Law,No.9.279)では特許の拒絶・ 無効についての罰則規定がある。
17 定・規則は存在しない。以下はブラジルの法律事務所3の見解である。
①対象となる発明の範囲
ア) 出所開示のレベルは、「原産国名」で十分か?
→原則として、「原産国名」だけの開示で足りるはずだ。しかし、用心深く考 えるなら、遺伝資源と伝統的知識へのアクセス権取得に求められる情報を見 れば、少なくとも我々としては「原産地開示」には、遺伝資源や関連の伝統 的知識を使用している「コミュニティ」「地方・州」が含まれるべきと思う。
また、「不明」という記述は受け入れられないだろう。出願人はこのような 活動に直接携わる関係者である以上、出所を知らないということはありえない。
イ)一般に市販されているような物質をもとにした発明であっても、対象となるか? →PM 第 31 条だけが出願時の遺伝資源出所開示の義務づけに関して規定してい
る法律条文であるが、解釈に非常に幅があり、あいまいであること、及び PM の有効性を更新する作業が行われていないことから、一般に市販されている遺 伝資源をもとにした発明に開示義務が命ぜられるか否か等の運用上の詳細につ いては現時点で明確に回答することはできない。
PM第31 条とPre-Bill 第80 条に関係した議論についてこの問題を回避す
る1つの方法として考えられるのは、すでに一般に市販されている生物遺伝資 源を使用した場合についても出願時にそれらの出所を開示することだ。我々の 意見は「かかる物質がすでに市販されているものであってもそれらは別の場所 で発見される可能性もあるので、それらの出所を明らかに伝えることが重要で ある」という事実に基づいている。
もし、「一般に市販されている物質」をもとにした発明が対象外との規則が 定められた場合に、特許庁の審査官が当該特許のもとになっている物質が 「一般に市販されている物質」か否かを判断できないことも想定される。そ のような場合は、その生物物質の情報を提供してもらうために出願人を呼び 出すべきであると考える。
また、遺伝資源の「派生物」をもとにした発明が、この対象になるか否かも 不明である。
ウ)開示すべき遺伝資源の取得がCBD発効以前であった場合の考え方
→批准規定第36.3条に従いCBDは、1994年5月29日よりブラジルで発効に なった。CBD と PM 第 31 条はいずれも、ブラジル発効日前の遺伝資源の原 産地開示義務化に関しては触れていないので、この義務は CBD が発効された 後に出願された明細書にだけ適用されるべきものと思われる。
18 エ) コーヒーの原産地はエチオピアであるが、ブラジル人がブラジルで栽培されてい るコーヒーをもとにした発明を出願する場合、出所としてエチオピアと記述し、 その発明から得られた利益はエチオピアに還元するのか?
→該当する遺伝資源がブラジルで栽培されたものである限り、出所は「ブラジ ル」と記述するし、利益もブラジルに還元する。(少なくとも、コーヒーは1 8世紀以降ブラジルで栽培されてきており、疑う余地もなく、「ブラジル産 コーヒー」であると見なすことができる。エチオピアについては、ブラジル 産コーヒーの歴史上の原産地として見なすべきだろう。)
②審査の運用
ア) 出所の開示に関する書類の添付が漏れていた場合、その出願の扱いは?
→非開示への制裁は「出願の拒絶」あるいは「特許無効」となるだろう。しか し最終判断を下す前に、おそらく特許庁は必要とされる情報の提出を求める ことになると思われる。
イ) ある一定の期間中に開示、または補正すれば、その後の特許審査業務を進めるの か?その期間はどれくらいか?
→出願人が遺伝資源の出所情報の提出もしくは修正に応じた場合は、出願手続 きは続行されるべきだと考える。
なお、産業財産法(Industrial Property Law No.9.279)によって定められた 公的措置への一般的な応答期間は、特許庁公報が公開されてから 60 日以内と なっている。我々としては、この期間は遺伝資源の出所開示についても適用さ れるべきと考えている。
ウ) 特許出願時に開示された遺伝資源の出所は、そもそも特許審査の過程においてそ れが正しいか否か判断するか? あるいは、出所が開示されていればよしとするの か?
→特許審査官は出所が正確に明示されているか否かを確認することはできないだ ろう。
出願人が特許明細書の中で開示が求められるということからすれば、ブラジ ル特許庁は単に出所が開示されているか否かのみを確認する。特許庁は出願 人に対し、提供した情報の正確性を裏づける宣言書に署名するよう求める。 この宣言書に基づいて、出願人は情報の信憑性に責任を持たされる。通常、 特許庁が出願人から提供された情報を検証する立場にはない。
(2)開示義務違反に対する措置・罰則
19 がない場合は産業財産法の規定(第50条)に従うと思われる。
<産業財産法(No.9.279)>
第 24 条 明細書には,当該分野における熟練した者によるその考案の実現を可能 にし,必要な場合は,その実施の最良の形態を正確に指示するため,対 象を明白かつ遺漏なく記載しなければならない。
補足 本条の定に従って記載することが不可能であり,公知のものでな い出願対象の実用に不可欠な生物学的物質の場合は,明細書は,INPI により認可された又は国際協定で指定された機関への当該物質の寄託に より,補足される。
第 25 条 クレームは,出願の特徴を明記し,明確かつ精緻に保護の対象を確定し, その根拠を明細書に記載しなければならない。
第50条 特許は,次の場合は,行政的に無効が宣言される。 (a) 何れかの法定要件を満たしていない場合
(b) 明細書及びクレームが,各々第24 条及び第25 条の規定を満して いない場合
(c) 特許対象が本来の出願内容を超えている場合,又は
(d) 特許手続において,特許付与に不可欠な何れかの基本的要件を欠 いていた場合
出所を開示しなかった際に受けるペナルティとして「登録・特許・ライセンス・権利 付与の一時停止・取消」の列挙に加えて、2005年6月7日の大統領令第5,459号が適 用されると思われる。この大統領令は関連する一連の罰金についても定めている。特に、 第 19 条と第 24 条で、虚偽の情報を提示した者、または遺伝資源や関連の伝統的知識 に関する開発活動・バイオプロスペクション・調査に係る政府当局から本質的な情報を 省略した者は、遺伝資源や伝統的知識の検査や査定を前提とする場合、あるいは遺伝資 源や伝統的知識のアクセス・付託の権利申請をする場合に、罰金を課すことが定められ ている。
<大統領令No.5,459>
第 19 条 会計監査の実施やアクセス・発送権を要求する際に、虚偽の情報を提示、 あるいは調査活動・バイオプロスペクション・遺伝資源に関係する技術 開発における必須情報の提示を当局に怠った場合:
法人の場合:最低 10,000 ~ 最高100,000レアルの罰金。 (約4,255 ~ 42,553 USドル)
20 第 24 条 会計監査の実施やアクセス・発送の権の要求をする際、伝統的知識アク
セス活動における必須情報の提示を当局に怠った場合:
法人の場合:最低 10,000 ~ 最高100,000レアルの罰金。 (約4,255 ~ 42,553 USドル)
個人の場合:最低 200 ~ 最高 5,000レアルの罰金。 (約 85 ~ 2,127 USドル)
21 「 遺伝資源及び伝統的知識への
ア ク セ ス に 関 す る 暫 定 規 則 」 (PM)
Provisional Measure No. 2.186-16 (2001年8月23日)
第10条 CGENの設置 第11条 CGENの権限
第12条 外国法人のアクセス
第15条 遺伝資源部の機能
第30条 行政処分
第31条 遺伝資源、 伝統的知識の 出所開示義務づけ
第35条 本暫定措置法の期限
(2001.12.30で失効)
大統領令 No.3,945 (2001年9月28日) 第 2条 CGENの構成 第 3条 CGENの責任 第 7条 遺伝資源部の機能 第15条 外国法人の
アクセス
「 遺 伝 資源 と その 生 産 物 、伝 統 的知 識 の 保 護、 及 びそ の 使 用 によ る 利益 配 分 に 関す る 先行 法案」(Pre-Bill) <未制定>
第80条 遺伝資源、 伝統的知識の 出所開示義務 づけ
大統領令 No.5,459 (2005年6月7日) 第19条 遺伝資源開示
未提示・虚偽時 の罰金
第 24 条 伝統的知識アクセ
ス情報未提示時の 罰金
対応する法律・規則なし
産業財産法(No.9.279)
第24条,第25条,第50条 明細書への記述条件とそれに反した場合の処置 (遺伝資源、伝統的知識の出所開示義務づける条項はない)
22 (3)遺伝資源へのアクセス手続きと承認機関の状況
PMは2001年12月30日に効力を失ったが、アクセス承認機関については、大統
領令No.3.945 (2001年9月28日)で規定されている。
①機関の名称と位置づけ、組織構成
ア)名称:Conselho de Gestao do Patrimonio Genetico (CGEN):遺伝資源管理評議会 英語表記には、以下の複数がある。
“The Genetic Heritage Management Council”(大統領令 No.3.945第1条) “The Council for the Management of Genetic Resources” (PM 第10条) “The Council on the Administration of Genetic Patrimony”
イ)位置づけ:環境省内の評議会(a Council to the Ministry of the Environment)
ウ)組織構成:(大統領令No.3,945号第2条):
CGENは以下 19 の政府機関の代表者から構成されており、環境省の代表者が議長 である。
・環境省 ・科学技術省 ・保健省 ・法務省 ・農務省 ・国防省 ・文化省 ・外務省 ・開発商工省
・環境再生可能天然資源局(IBAMA) ・リオデジャネイロ植物園研究所 ・科学技術開発委員会(CNPq) ・国立アマゾン研究所
・ブラジル農牧業研究公社(EMBRAPA) ・オズワルドクルズ財団(FIOCRUZ) ・エバンドロ・シャーガス研究所 ・国立インディオ基金(FUNAI) ・国家産業財産庁(INPI) ・ パルマレス文化財団
なお、環境省の「遺伝資源及び関連伝統的知識への合法的アクセスのための規定
23 ・ 公共省
・ パラ州エミリオ・ゲルジ博物館 地域市民の代表として
・ ブラジル科学進歩会(SBPC) ・ ブラジルNGO連盟(Abong)
・ ブラジルバイオテクノロジー会社組合(Arabi) ・ 開発維持のための企業評議会(Cebds)
・ 農耕黒人及びキロンボ(黒人奴隷子孫)社会連結委員会 ・ セリンゲイロ(天然ゴム樹液採集者)評議会(CNS) ・ アマゾン先住民組織委員会(Coiab)
また、CGEN が中心となって策定を進めている Pre-Bill でも、政府組織に加え て先住民、キロンボ、地域社会、民間企業、学術界などを加えた案となっている。
エ)CGENの機能(大統領令No.3,945 第3条)
A.遺伝資源の管理政策の遂行の調整 B.以下の設定
(a)遺伝資源の管理に関係する技術的基準 (b)遺伝資源のアクセス及び移転の許可の基準
(c)遺伝資源の使用及び利益配分に関する契約作成のための指針
(d)関連する伝統的知識についての情報を記録するデータベース構築の基準 C.連邦諸機関と協力して又はその他の機関との合意により行われる遺伝資源の構成
要素の標本へのアクセス及び発送並びに関連伝統的知識へのアクセスの監督 D.次の事項についての協議
(a)所有者の事前の同意を条件として、遺伝資源の構成要素の標本へのアクセス 及びその発送の許可
(b)所有者の事前の同意を条件として、関連伝統的知識へのアクセスの許可 (c)生物学及び関連分野において研究開発活動を行う国内の機関(公的機関であ
るか民間機関であるかを問わない)及び国内大学(公立であるか私立である かを問わない)に対する遺伝資源の構成要素の標本へのアクセス及びその発 送の2年間(ただし2年ごとの更新が可能)を最長の期間とする特別許可 (d)生物学及び関連分野において研究開発活動を行う国内の機関(公的機関であ
るか民間機関であるかを問わない)及び国内大学(公立であるか私立である かを問わない)に対する関連伝統的知識へのアクセスの2年間(ただし2年 ごとの更新が可能)を最長の期間とする特別許可
(e) 国内の公的研究開発機関又は連邦の公的管理機関の認定
24 し以下の許可を与えることができる
i) 遺伝資源の構成要素の標本及び関連伝統的知識へのアクセス
ii)国内の機関(公的又は民間の施設であるかを問わない)又は海外の機関へ の遺伝資源の構成要素の標本の移転
(f)遺伝資源の構成要素の標本の寄託機関としての国内の公的機関の認定
(g)PMまたは大統領令No.3,945の規定に対する違反を理由とする機関の認定の
取消
E.PMに従った遺伝資源の使用及び利益配分に関する契約の承認 F.PMに規定されている事項に関する議論及び公聴の促進
G.認定機関の決定及びPMの執行に関する異議申立に関する最上級の機関としての 機能
H.自らの決定する定款の承認
オ)CGEN の 執 行 事 務 局(the Executive Secretariat)と し て 、 環 境 省 内 に 遺 伝 資 源 部
(Department of Genetic)が置かれており、CGENの決議に従ってアクセス許可の発
行、取消し等を行っている。
25 キ)遺伝資源部の具体的な役割を以下に示す。(大統領令No.3,945 第7条)
A.CGENの決定の実施
B.CGENにより決定されるべきものとして提出された案件に係る手続 C.認定機関への支援の提供(上記、エ) D. (e) 参照)
D.ブラジルの領土、大陸棚、排他的経済水域に存する遺伝資源の標本へのアクセス 及びその移転に対する許可、並びに関連伝統的知識へのアクセスの許可の発行 E.生物学及び関連分野において研究開発活動を行う国内の機関(公的機関であるか
26 期間とする特別許可の発行
F.連邦諸機関と協力して行われる、遺伝資源の構成要素の標本へのアクセス及び移 転並びに関連伝統的知識へのアクセスの監督
G.遺伝資源の構成要素の標本及び関連伝統的知識へのアクセス又はPM第19条に 従った海外の機関への遺伝資源の構成要素の標本の移転に関する許可を他の国内 機関(公的機関であるか民間機関であるかを問わない)に対して与えることがで きる国内の公的研究開発機関又は連邦の公的管理機関の認定の促進
H.国の公的機関に対する遺伝資源の構成要素の標本の寄託機関としての認定の促進 I.PMまたは大統領令No.3,945の規定に対する違反を理由とする機関の認定の取消 J.CGENによる承認に基づく遺伝資源の使用及び利益配分に関する契約の登録 K.PMまたは大統領令No.3,945第19条(Ⅱ)の下で行われるブラジルが加盟する
国際条約(食品の安全に関連するものを含める)において交換を促進するものと 指定された種の一覧の公開
L.次に掲げるものの作成及び維持
(a)PM第18条に規定に基づく生息域外採取の登録簿
(b)遺伝資源の構成要素の標本の採取の間に取得された情報を記録するためのデー タベース
(c)遺伝資源の構成要素の標本へのアクセス及びその移転及び関連伝統的知識への アクセスの許可、素材移転契約並びに遺伝資源の使用及び利益配分に関する契 約のデータベース
M.アクセス及び移転の許可、素材移転契約並びに遺伝資源の使用及び利益配分に関 する契約の一覧の定期的な開示
②アクセスの承認
ブラジル以外の外国法人が、遺伝資源や伝統的知識へアクセスすることが許され るのは、アクセスについて主導権をもったブラジル国内の公的機関と協力する場合 であり、かつ関連する全機関が生物学及びその他の分野において研究開発活動を実 行する場合に限られている。(PM第16条§6)
なお、外国法人が遺伝資源へのアクセスする場合は、以下の規定に従って、その 外国法人と協力するブラジルの公的機関(a national public institution)が科学技 術省内の委員会である「科学技術開発委員会(National Council for Scientific and
Technological Development:CNPq)」の認可を得る必要がある。ただし、商業的
使用の可能性を伴うアクセスの場合は、CGENに申請し、CGENからCNPqの許 可を得る形となる。
<大統領令No.3,945>
27 ないものであるときであっても、PM 及びその他の条文にしたがって科 学技術開発委員会の許可を受けなければならない。
同様の条項がPMにもある。 <PM>
第 12 条「生物資源調査を進展させる遺伝資源の構成要素を採取する活動及び関連 伝統的知識へのアクセスは、外国の法人が参加する場合には、本暫定的規 則及び現行法の条件に従って、国の科学技術研究に関する政策の担当機関 の認可を必要とする。
(上記の条項の「国の科学技術研究に関する政策の担当機関」とは 「科学技術開発委員会のことである。)
<遺伝資源及び関連伝統的知識への合法的アクセスのための規定(2005.4)>
IV. CGEN 8. 許可を発行する各機関
c)生物資源調査、技術開発あるいは生息域外収集物の構築等の商業的使用の可能 性を伴う活動のための遺伝資源へのアクセス:
生物資源調査や技術開発、生息域外収集物の構築といった商業的可能性 を伴う活動を目的とする遺伝資源へのアクセスに対する許可を求める場合、 かかる許可はCGENによって発行される。
生物資源調査や技術開発を目的とした国外への移転は、寄託機関を含む 各機関の間で交わされる遺伝資源使用契約によりカバーされる。
外国法人によるブラジル領域内でのアクセスを伴う場合の許可申請は CGEN に提出されなければならない。単一のプロジェクトや調査研究の ための許可を複数の連邦政府機関に申請するという必要性をなくすため、 CGENが科学技術省・科学技術開発委員会の協力を求める。
( http://www.mma.gov.br/port/cgen/index.cfm )
③アクセスの承認に必要な書類(大統領令No.3,945 第8条)
ア)生物学及び関連分野において自らが行う研究開発活動についての証拠
イ)遺伝資源の構成要素の標本及び関連する伝統的知識の採取と発送を行うことに関す る専門的資格
ウ)遺伝資源の構成要素の標本の取扱いに係る内部体制
エ)遺伝資源の構成要素の標本の採取又は伝統的知識へのアクセスに関して説明するも のである研究プロジェクト案
研究プロジェクト案には以下が含まれなければならない。
A.背景、理由、目的、方法及び取得された標本又は情報により得られること が期待される成果
28 C.採取される素材又は情報の種類及び採取される標本のおおよその量
D.資金源、それぞれの参加者が負担する金額と責任の区分
E.参加する研究者及び技術人員の履歴書(科学技術開発委員会が管理するシ ステム中に含まれていない場合)
オ)採取活動において標本の採取が行われる地域に立ち入ることについての事前の同意 カ)取得される遺伝資源の送り先
なお、先の法律事務所の見解は以下を追加する必要があると考えている。 ・ 企業文書(会社規約、組織等)
・ 申請団体が調査活動に従事していることを証明する資料(内規、出版物やプロ ジェクトのリスト)
・ CGEN に正式に認定された標本寄託機関に関する情報(この中には、このプロ ジェクトの標本寄託機関としての活動について合意された文書も含まれる)
・ 申請団体の法定代理人、法廷弁護人の権限を認める資料(必要に応じて) ・ プロジェクトが複数の団体で行われている場合の協力に関する合意条項 ・ 調査されるエリアの所有権を証明する文書
・ 関係者によって正式に署名捺印された遺伝資源の使用と利益配分に関する合意 ・ 提示された情報が機密情報か否かの区別
●CGENは本手続きと権利付与に際する手数料を徴求しない
④承認に要する日数
プロジェクトの複雑さや、審査期間中に出されるオフィシャルアクションに出願 人がどれだけ迅速に対応するかにもよるが、CGENが権利を付与するまでには平均 12ヶ月~20ヶ月を要している。
「CGENは比較的新しい組織なので(公式には2001 年9 月)、今後遺伝資源と伝 統的知識へのアクセス権の付与や分析のために一連の手続きを発展させ、実行して ゆかねばならない。」との、先の法律事務所の見解から、CGENの承認活動の状況 がうかがえる。
⑤承認処理件数実績
・アクセス承認申請件数:トータルで25件が現在審査中。
(うち11件が2005年に出願されたもの。)
大部分が外国法人との共同研究に基づくものと推測される。 ・ アクセス承認の付与:現在まで、トータルで27件承認済。
(2005年8月30日現在のデータ) ・ 出願人の依頼により取り消された申請:13
29 ・ 拒絶された申請:3
・ 出願人のミスで適切な時期に文書を提出しなかった、あるいは PM を順守しな かったことによる拒絶:9
(CGEN のサイトに掲載しているデータ。年間だか累積だか、何を基準に しているのか明記されていない。我々の推測では累積だと考える。具体的 な年号の記載もない。)
(4)ブラジルINPIの実情と意見
(2005.7.22アンケート) INPI :Instituto Nacional de Propiedad Industrial
Dr. Maria Celi S. Moreira de Paula Title of Head: President National Institute of Industrial Property
Praça Mauá 7 18th floor – Centro 20081-240 Rio de Janeiro – R.J.
遺 伝 資 源 の 開 示 義 務 に 関 し て 、 議 会 内 バ イ オ パ イ ラ シ ー 査 問 審 議 会 (The Parliamentary Inquiry Commission of the Biopiracy)で採択された決議では、 INPIがPMの第31条を遵守していないとの報告がなされた。
PM第31 条では、INPIに遺伝資源と関連のある伝統的知識アクセスの規制と遺 伝資源と関連のある伝統的知識のサンプルに由来する製品やプロセスの特許の承認 にはこの条件を遵守することを課している。このPMは、状況に応じて出願人が遺 伝資源と伝統的知識の原産地の報告を行う義務を規定するために設けられている。
また、知的財産に関する権利と義務を規定している産業財産法では、INPI は特 許付与、出願、審査、登録に責任を負うことが明確になっている。 しかし、PMに は INPI が実施すべき処理の定義や管理の対象とする時期など、その処置の実際上 のパラメーターや条件が明確にされていない。仮に、PM 第 31 条の規則に従うよ う政府から強制されたとしても、実施しようがない。
なお、PM 第 35 条を文字通りに解釈すると、「政府はこの PM の有効期間を 2001 年12 月30日まで」としている。期限が過ぎた場合、自動的に効力を継続す るわけでないにもかかわらず、有効性を回復させるための法律も制定されていない。
さらに、2001年の大統領令No.3,945により、PMの第10,11,12,15,16条だけが 有効に機能し、CGENの活動を規定する基準が示されているものの、PM 第31 条 を規定するものがないことから、特許出願時の遺伝資源の出所開示を実行できる段 階にあるとは思えない。
30 (5)法律事務所の実情と意見
(2005.6.30アンケート、2006.10.7.現地調査) Trench, Rossi e Watanabe Advogados(TRW)法律事務所
Ms. Vasconcelos-Pereira,Flavia(Advogada)
Av. Rio Branco, 1, 19- andar - Setor B 20090-003 Rio de Janeiro - RJ - Brasil
①遺伝資源の出所開示をしている出願件数
本事務所では、これまで遺伝資源や伝統的知識の開示に係る特許明細書を出願した ことはない。
②出所開示制度に対応することによる法律事務所の状況変化 特に変化が必要とは思われない。
③特許制度と出所開示制度との整合性に関する意見
(特許出願時における遺伝資源の開示義務づけは、当業者がその発明を理解できる程 度に技術の開示をするという本来の特許制度の精神と整合しないという意見もある が、この点どう考えるか?)
→発明の主題がかかる遺伝資源から発展してきた以上、出願時に遺伝資源の出所情 報を開示することは正当な要求であると確信している。しかし、PM第31条で規 定されている条件(特許権付与には明細書に遺伝資源の情報を加えることを条件 づける)には賛成しかねている。特許付与の条件としてこれを開示要件に加える ことは、特許の最終的な決定において、現在の特許要件である「新規性」、「進 歩性」、「産業上の利用可能性」より、むしろ遺伝資源の出所開示の有無に注目 することになりかねず、特許制度の有効性に対する挑戦になってしまう。遺伝資 源の出所開示はこれらの資源を保有するコミュニティに権利があることを認めさ せるという目的をもっているのみであり、その発明の特許有効性を判断するため の技術的要件に加えるべきではない。
TRIPS 協定第 29 条の解釈についても、我々は遺伝資源の出所に関する情報の
明示は「十分な開示」という概念に含まれると考えていない。TRIPS 協定の条文 は、発明は技術分野の専門家が実施することができる程度に十分説明されること を求めているだけである。遺伝資源の出所は技術的情報というよりはむしろ補助 的情報であり、遺伝資源情報の提供を求めることと特許制度が求める要件は互い に一致してはいない。ただし、特許性に影響を及ぼさないという別の理由におい て、他の文書でのそれら情報の開示は重要である。(即ち地域社会との利益配分 等)